古今和歌集


古今和歌集は、平安時代前期に天皇の命令によってつくられた勅撰和歌集です。

この古今和歌集のなかで、緋色は"思ひの色”と詠まれています。"思い”を"思ひ”と書いていたので、"思ひ”の"ひ”から緋色と連想されます。

また、"ひ”を"火”にかけ、又、"火”を"緋”にかけ、情熱を色に喩えたとの説もあります。

思(おもひ)の色 英:Scarlet 仏:Ecarlate

緋色はYellowish Red

緋色 英:Scarlet 仏:Ecarlate 独:Scharlachrot 分類色名:Yellowish Red

緋色は、赤色の濃いものを言う。あけに同じ。又、茜色に同じ。時代により緋色にも種々ある。

 

茜色 英:Cardinal 仏:Ruby 中:深紅 分類色名:Deep Red

濃赤色の稍黒味があるものをいう。もと茜草で染めた色である。染方祕傳「茜草根の新しきを摺り潰し笊に入れ桶の上に置き湯を掛ける。

一度だしたる残りの根を又摺り潰し二番染をして乾かし灰水に浸す。」

 

さて、ここで分類色名:Yellowish Redの仲間をご紹介します。

・紅樺色 英:Amber Red 仏:Rouged ambre 中:木紅 赤味の多い樺色(かばいろ)

・火色

・さび色

・赤蘇芳 英:Poppy 蘇芳色の朱色がかった色をいう。

・紅柿色 英:Jasper Red 中:丹色 柿の実の紅熟したごときを言う

・丹色(にいろ) 赤味の朱の色を言う。主に丹塗などといって、平安朝時代の建築に用いられた。

・銀朱 英:French Vermillion 朱は水銀と硫黄との化合物であることからこの名がある。

・猩紅(しょうこう) 猩々緋の色に似た色です。

・猩々緋 英:Scarlet 仏:Ecarlate  赤色を見極めて、濃く鮮やかなものを言う。中国でインド人が橋教に共感しています。

中国で印度人が猩紅の血を採って、赤色の染料とするということから、かく名づけたものだという。

 

緋銅は、その名の通り"銅"を用いますが、銅がつく色もいくつかあります。

赤銅色(しゃくどういろ)は、紫を帯びた赤黒い色をいう。海女さんのように潮風に日焦けした肌色を赤銅色という。

緋銅色(分類色名:Reddish Brown)は、銅の赤く色付した色をいう。

最も鮮やかな赤い色

赤色を染める植物染料のなかで、大昔から知られていたのは茜(アカネ)。この名前は、赤い根ということであって、アカネ草の根がアカネ染に使われた。

その茜染めの最も鮮やかな赤い色につけられた色名が緋色です。

また、紅花の染色はやや色がさめやすかったので、後に黄と重ね染めをするようになり、この色も緋色といわれるようになった。このような黄みの赤をときに紅緋ということもある。

西洋のスカーレット緋色と訳されるが、こちらはエンジムシ(臙脂虫)から採られた動物性染料による色だったらしい。

緋銅の制作風景
銅を高温で熱して緋色を引きだす作業

袍(ほう)の色

孝徳天皇の文化3年(647)の当色では、濃紫、浅紫に次ぐ、高位の冠衣の色として真緋(あけ)があげられており、持統天皇の4年(690)の定めでは、赤紫の次が緋とされている。文武天皇の大宝元年(701)の定めでも、赤紫に続いて深緋(こきひ)、浅緋(うすひ)が出てくるので、7~8世紀ごろから、紫に次ぐ高い位階を象徴する色だったことがわかる。10世紀の法典「延喜式」で紫に次ぐ高位の色とされていたのは「深緋(こきひ)」だったが、これは紫と茜の交染だっただろう。浅

緋(うすきひ)が茜だけで染められた緋色だった。

西洋のスカーレットも枢機卿職を表す色だったから、この黄みの鮮やかな赤は昔からかなり特権的な色であったといえよう。

源平合戦

源平両氏が争って武家支配の社会が確立するまでの合戦の次第を物語る中世の軍記物のなかには、源平それぞれの主だった武将が緋色の色糸でつづった緋威(ひおどし)の鎧を身につけて奮戦するし、鎧の色でなければ直垂(ひたたれ)や、はかまに緋色を用いて敵味方の目に活躍を印象つけようとした。武勇に自信のある武士にとって、緋色は自身を目立たせるのに、まさにうってつけの色でもあったようだ。

この時代の緋威の鎧は、すでに茜染ではなく、紅花染だったという説もあり、その色合いはまるで火が燃えているようだったので、火威(ひおどし)と言ったのだともいう。

 

近世の婦人の着物に使われた緋鹿の子、緋縮緬、あるいは敷物に使われる緋毛氈などの緋色になると、もはや古代の権威や格式は希薄になる。現在では、神社の巫女さんの袴色や、ひな祭りの雛壇の緋毛氈の色などが、伝統的な緋色の面影をわずかに伝えているといえるかもしれない。

赤色の感情と表徴

緋色、深緋、浅緋、紅緋、火色、猩々緋は、すべて赤色に属する。

赤色は人の感情を興奮せしめる特異な力を有する。殊に緋色の鮮明なものにおいては然りである。

赤色はエネルギーを発散するがごとく、熱情的、活動的で躁狂的の感覚をさえも与えるようである。又、赤色は熱を連想せしめる。烈火の色、熱鉄の色、共に赤色である。それ故、表徴するところも、熱情、勢力、活力、威力、熱心、勇気、愉快、喜悦、生長、恋愛、暴行、危険などで、その他、至誠、誠実、博愛をも表徴するという。

参考文献

色の百科辞典<日本色彩研究所>

日本の伝統色 色の小辞典<財団法人日本色彩研究所>

色名大辞典<財団法人日本色彩研究所>