サファイア


サファイアは、ラテン語の青色を表す「sapphiros(セフィロス)」が語源です。中世では、哲学者、聖人の石と言われ、枢機卿や司教がサファイアの指輪をして、信者に触れて誠実や慈悲を与え、病を癒し、人々を悩みから救ったそうです。キリスト教徒は、清らかさと神の王国の輝かしい力をあらわしているサファイアは、聖母マリアを象徴すると考えられています。

 

1981年にチャールズ皇太子からダイアナ妃へ、2010年ウィリアム王子からキャサリン妃へと贈られた英国王室継承の18ctのブルーサファイアもスリランカ産として話題を集めました。世界でも最大級のスリランカ産のブルースターサファイア“Star of India”は、NYのアメリカ自然史博物館に展示されています。

 

ビルマのモゴク産のサファイアは、ロイヤルブルーといわれる深みのかかった美しいサファイアです。今日ではごくありふれた品質のものは採れるものの、最上級品はすっかり影を潜めてしまっています。

ブルーサファイア

慈愛・誠実・徳望

コランダムという鉱物のサファイアの色は、青・藍・紫・橙・黄・緑があります。サファイアの青は不純物の鉄とチタンが起因しています。オレンジがかったピンクサファイアの色は「蓮の花」という意味のパパラチャと呼ばれます。「サファイアの王」とも呼ばれますが、極めて産出が少ないことから、「幻の石」ともいわれていました。

 

2001年マダカスカルでも産出された「天然のパパラチア」が、アメリカのGIA(米国宝石学会)で、これらのパパラチアが全て表面拡散(ベリリウム拡散処理ともいい、宝石を特殊な処理(トリートメント)で表面だけを変色させる)が行われていると発表しました。ベリリウム拡散処理されたパパラチアは2004年から鑑別書には、「拡散処理のサファイア」と明記が改正され、パパラチアとは明記できません。

ファンシーカラーサファイア

サファイヤを産出する国と歴史

スリランカでは、2000年前、文献の記録では13世紀頃からコランダムの加熱処理が行われていました。吹管(blow-pipe)法と呼ばれ、主にルビーの色調を改善したり、内在する青味を除去するために加熱されていました。

 

1970年代、色の淡いシルクインクルージョンの詰まった透明度の低いサファイアを、シンハラ語で“白っぽい”を意味する言葉『ギウダ』の加熱が行われるようになりました。一般に非加熱のスリランカ産ブルーサファイアは、色は淡いのですが、透明度が高く爽やかな青は美しいです。

 

19世紀末にヒマラヤ山脈に連なるカシミールのザンスカー山脈の頂に近い標高4500m地点に発見されました。20年余り採掘された(夏の3ヶ月間のみ)だけで鉱脈が枯渇した最上のカシミールサファイアは、特有の素晴らしく澄んだビロードのような色合いはコーンフラワー(矢車菊)の青と称され、最上級の評価を得ていました。

 

1995年マダガスカルでは、非玄武岩起源のスカルン鉱床から産出されたサファイアの最上級品は、カシミール産に匹敵する澄んだ深い青と透明度で注目を集めました。

 

現在では、質、量共に、世界有数の産地ですが、他の産地は玄武岩起源のために、沈んだ青や多色の色合いです。平均で1カラット程度の小さなルースが大半なため、カシミール産よりも評価は低く、モゴク産より安くなっています。

スターサファイア

タイは世界で最大の色石の加工国

タイは、重機を用いた大規模な採掘の結果、1990年代初頭には鉱脈はほぼ枯渇してしまいました。しかし、余りにも黒ずんだ色合いから「インクブラック」と呼ばれて価値がなかった原石を、加熱処理により色を薄める技術がタイで開発され、世界の50%以上を占めるオーストラリア産のサファイア原石は、タイで処理されて出荷されています。

 

他にもスリランカ産のギウダと呼ばれる白濁した原石の加熱処理や、マダガスカルやタンザニアなどのアフリカ産のサファイア原石の加熱処理、研磨、宝飾品への加工等、世界で最大の色石の加工の中心地となっています。

 

1860年代、アメリカのモンタナ州でサファイアが発見されます。しかし、濃い青の原石以外はいずれも淡色で小さくしかも平板状の結晶が多く、精密機器の材料として一時は大量に採掘されました。

 

近年、淡色の原石を加熱処理で美しく発色させる技術が発達したため、多彩なパステル・カラーのモンタナ・サファイアが注目され、数多くの鉱山が復活、再開発されています。

 

1910年、火炎溶融法によるサファイアの合成方法が確立されました。1913年にはサファイアの年間生産量は600万カラットに急拡大しました。100年ほど昔のヨーロッパの宝飾品のアンティークに美しいサファイアが用いられていた場合には、合成品の可能性があります。現在は、産業用で宝飾用途は極めて少ないと考えられます。

Pt900サファイアリング

日本伝統技法緋銅の告知
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