オパールの名前は、ギリシャ語で「色の変化を見る」という言葉の”opallios(オパリオス)” から派生しています。
このopalliosは、古代インドのサンスクリット語「貴い石」を意味する”upala(ウパラ)”に由来します。
これらの語源から「色の変化する貴い石」となります。
古代ローマ時代、虹色に輝くことから希望を意味し、幸せを招く”キューピッド・ピデロス(天使の石)”と呼ばれていました。
希望と純粋さに澄んだ瞳で、物事を見て可能性と夢を見出す『洞察力と予言の力』を象徴する宝石と信じていました。
紀元75年、ローマ時代の博物学者プリニウスは『博物誌』の中で、
”ルビーより柔らかい焔と、アメシストの紫色の輝き、エメラルドの海の緑色が絶妙に調和していて、その新鮮な色はアルメニウムとして知られる絵の具に似ている。”
最も貴重な宝石のすばらしい諸性質を併せ持っていて、それは他のどの宝石よりも優れていると、賛辞を惜しみませんでした。
エジプトやバビロンでは、光と水のお守りとされていました。
アラブの伝統では、天から落ちてきたオパールを身につけていると稲光から守ってくれ、日頃の好ましくないことを防ぎ、望めば姿を消すマントになってくれると信じられていました。
英国の文豪シェークスピアは、『十二夜』でオパールを「宝石の女王」として誉めたたえ、「あなたの心はオパールそのもの」という名台詞を使って、女の移り気や変身を表現しています。
英国の美術学者ジョン・ラスキンは、「オパールの微妙な美しさと競えるのは、空の美しさだけだ」といっていますが、たしかに十月の夕焼け空にはオパールを連想させます。
19世紀のイギリスの作家ウォルター・スコットの「Anne of Geierstein(ガイアスタイン)」の小説には、女主人公のハーマイアーがオパールのはめ込まれた止め金を髪に身につけ、ハーマイアーの一挙手一投足、あるいは心の動き、感情の抑揚などオパールの虹色の変化を通して表現され、オパールを誕生月に生まれた者以外が着用すると不運になるという迷信が広がりました。
ドイツの王族や貴族は、オパールを愛好しドイツを象徴する王冠にはオパールが飾られていました。
母からオパールは『希望の星』と聞いたイギリスのビクトリア女王は、「自分のように幸せな結婚生活に恵まれるように」と5人の娘の結婚祝いに素晴らしいオパールを贈ったと言われています。
オパールの特徴は、見る角度によって色合いを変化させる美しい「遊色効果(プレイ・オブ・カラー)」です。
これは、オパールを構成するシリカという微粒子が光の影響を受けることで様々な色の光を放つ効果を言います。
遊色効果がある「プレシャスオパール」と遊色効果のない「コモンオパール」とに区別されています。
また、オパールの母岩「ポッチ」で分類されます。ブラックオパールは黒いポッチ、セミブラックオパールはグレーより濃い黒までいかないポッチ、白いオパールは白いポッチ、ボルダーオパールは鉄鉱石のポッチ、ジェリー(クリスタル)オパールはポッチなし。ポッチが表に見えるマトリックスオパールです。
1890年代、初めてオーストラリアでオパールが発見されました。
オーストラリアの原住民アボリジニの伝説には「造物主が虹に乗って大地に降り立ち、すべての人間に平和の知らせを持ってきた」とあります。
今日、ライトニングリッジやクーバーペディ、アンダムーカ、ミンタビーといった有名な鉱山で、世界に流通する4分の3が採掘されています。
半透明で回折した光がクリームのように見えるホワイトオパールの最大の生産地は、クーバーペディです。
クイーンズランド産ボルダーオパールは、母岩である茶色い鉄鉱石鉄鉱石の大きな岩の割れ目やひび、穴、裂け目などオパールが含まれています。カットの形は均一でなく、不規則で、輪郭がいびつな波型の表面を作り出すため、ひとつひとつが個性豊かです。
ブラックオパールよりも明るい透明感のあるセミブラックオパールは、1930年代にアンダムーカで発見されました。
1960年代、何十万ポンドもの価値のあるアンダムーカ産のオパールが女王エリザベス2世に贈られ世界中に知られていますが、へんぴな場所で輸送費がかかることから、現在は少量しか生産されていません。
1902年オーストラリアのライトニングリッジで発見されました「オパールの王」ブラックオパールは、濃い灰色から黒色のボディーカラーを持ち、美しく輝く遊色効果のある宝石です。今日でも採掘量は世界最大の産地ですが、10年前の半分になっています。
ブラックオパールの鉱床である「大鑽井盆地」は、1億4000万年以上前に存在した大きな内海の堆積物からできています。約1億2000万年後、川に運ばれてきた砂岩がこの堆積岩の上にたまりました。
やがてこの新しい岩は風にさらされ、中の二酸化ケイ素がゲル状になって古い岩の穴に流れこみました。この二酸化ケイ素のゲルが核を包むようにして固まり、オパール独特の規則的なシリカ球とすき間を作ります。
この透明な空間を通る光の回折が、オパールの美しい遊色効果を生み出します。
一般的な遊色効果のパターン
ファイヤーオパールは、真っ赤なチェリー色や強い日差しのような黄色、深いタンジェリン色です。
息を飲むような輝き、オパレッセンス(乳光)、並外れた炎のような色、そして透明度が特徴です。
アステカの人々は「ケッツァリツリピョリトリ」、「楽園の鳥の宝石」と名づけ、情熱的な愛の象徴として大切にし、このように輝くオパールは万物創造の最初の水から生まれたに違いないと考えました。
ファイヤーオパールの主な産地はメキシコ。
最近では、タンザニア、エチオピア、マリ、ブラジルでも見つかっています。
透明な純粋のジェリーオパール(ウォーターオパールまたはクリスタルオパールとも呼ばれる)は、メキシコとオーストラリアで採掘されています。
はっきりとしない色がいくつか組み合わさった遊色効果が魅力で、ゼラチンのような見た目と、直接光に当てると強調されるオパレッセンス(青みのある光沢)が特徴です。
オーストラリアでは、カットされたジェリーオパールを黒い土台(ブラックロジウム)にはめこみジュエリーにします。
1960年代に発見された緑色の半透明のグリーンオパールは、クリソプレーズやジェイドに似ていることから、プレーズオパールあるいはクリソパルと呼ばれ、タンザニアのアルーシャ地域で採掘が行われています。
遊色効果はなく、微量のニッケルによるミント色からアップルグリーンの色合いが、ジュエリーとして人気があります。
アンデスから運ばれ、古代インカの人々に愛されたペルー産オパールは、非常に珍しいもので、見事な半透明の色合いをしています。
青やピンクがふつうですが、時には緑のものが見つかることもあります。
オパールは、3~10%が水分で構成されています。そのため、水分を失うと、くもの巣に似た細かい網のひび割れにつながります。
乾燥や熱、衝撃にはとても弱いデリケートな宝石です。直射日光や光の当たる明るい場所は避け、水分と一緒に保管する必要があります。あまりに乾燥が進むとひび割れを起こすこともあります。
金属よりも柔らかいので、それらにぶつけたりすることは避けましょう。
組み立てオパールは、通常、宝石品質の宝飾品とはならないガラスのような材料が含まれています。
よく見られる2つのタイプは、ダブレットとトリプレットです。
黒曜石、染色ブラックカルセドニー、ブラックガラス、天然の共通オパール、またはプラスチックで構成されているダブレットは、裏材に接合した薄いオパールです。
トリプレットは、無色クォーツや透明なガラス、黒曜石、カルセドニーのドームのトップと、ブラックガラスや黒曜石、カルセドニーのバッキングの間に貼られたオパールの薄い層です。