ジルコン

ジルコンとは、アラビア語で「赤」を意味する「zarkun(ザルクン)」に由来します。


また、古代ペルシャ語で「金」の「zar(ザル)」と「色」の「gun(グン)」の組み合わせ「Zargun(ザルグン)」に由来します。


ジルコン色の範囲は、イエロー、グリーン、レッド、レッディシュ・ブラウン、ブルーと多彩な色相があり、どちらも可能性があります。


ジルコンは、いくつかの世界最古といわれる遺跡で出土したり、文献でもさまざまな名前でジェムストーンの取引に登場しています。

ジルコンの原石

穏やかな人間関係

たとえば、ジャーゴン(イエロージルコン)、ジャシンス(レッドジルコン)、マトゥラダイヤモンド(ホワイトジルコン)、スターライト(ブルージルコン)、ヒヤシンス(ブルー、イエロー、レッドジルコン)、リギュールといった名で呼ばれています。


古代インドの「劫波の木(カルパ・ツリー)」の物語の中で、神への究極の贈り物としてヒンドゥーの詩人が描いたカルパ・ツリーは、葉にジルコンがちりばめられた明るく輝く木として書かれています。

 

中世には、安眠を誘導し、悪霊を追い払い、富、名誉、および知恵を促進すると考えられていました。


ユダヤの伝説では、火のような星明かりのジルコンは、エデンの園のアダムとイヴを監視するために遣わされた守護天使の名前になっています。

ジルコン12月の誕生石

地球が誕生して1億5千万年後、44億年前の西オーストラリアで発見された小さなジルコンの欠片は、地球上で現在知られているなかで最も古い物質です。


ダイヤモンドは33億年前です。カンボジアの「宝石の山」という意味のラタナキリは、世界最高品質のブルージルコンを産出します。

 

聖書のなかでは、モーゼが与えられた「火の石」のひとつであるとされ、モーゼの兄アーロンの胸当てにつけられたと書かれています。

 

エルサレムの城壁の土台に埋めこまれた12の宝石のひとつで、使徒シモンにゆかりの石とされています。


ローマの歴史家、大プリニウスは、ブルージルコンの色を「Hyacinth(ヒヤシンス)」の花にたとえました。


日本語では「風信子石」と置き換えて呼ばれています。

ジルコンの原石

知恵、名誉、富をもたらす

伝統的には、「純粋」と「無垢」を象徴するジルコンは、心の安らぎをうながし、身につける人に知恵、名誉、富をもたらすと信じられています。


また、ジルコンの輝きが失われると危険が迫っている前兆だという言い伝えもあります。


16世紀にイタリア人の職人たちがジルコンを主役に装身具をデザインするようになって劇的に人気が高まりました。


1880年代以降、ビクトリア朝時代の英国の遺産宝飾品の中で特徴的な特別な愛好品にブルージルコンが大いに使われました。

 

18世紀以来スリランカで、無色とごく淡い黄色のジルコンが採掘され、品質の低いダイヤモンドを意味する「マタラ・ダイヤモンド」と呼ばれました。

ブルージルコン12月の誕生石

ジルコンとキュービックジルコニアは別物

1896年のマックス・バウアーの著書『プレシャス・ストーン』には、透明な黄色みがかった赤色のジルコンはヒヤシンスと呼ばれていたが、人気はなかったと書かれています。


1900年代初頭にダイヤモンド模倣品として無色ジルコンが幅広く使用されました。さらに残念なことに、よく混同される『キュービックジルコニア』は、ダイヤモンドの代用品で安価な合成品です。

 

ジ ルコンの特徴として、ジルコンの内部を光が通るとき、1つの光線を2つに分ける複屈折(二重屈折)が大きく、バック・ファセットが二重に見え、さらに厚み が増して見えることになります。光をプリズム効果で虹色に分散することで現れるディスパーションと呼ばれる輝きです。屈折率のあるペリドットの約2倍で す。


ラウンド・ブリリアント・カットのパビリオンにファセットを8つ加えたジルコンカットは、この特性を活かしたカットです。しかし、労賃がからむため、今日ではブリリアントやステップカットのファセットの組み合わせのミックスカットもみられます。

ジルコン12月の誕生石

ティファニーの有名な宝石バイヤーである宝石鑑定士ジョージ・クンツは、ジルコンを「スターライト」という名称で提案しましたが、まったく根付きませんでした。

 

宝石用ジルコンの産地は、インドネシアとタイですが、スリランカ、ビルマ、フランス、オーストラリアなどでも産出します。


また、オーストラリアなど海岸の砂鉱床から採取されるジルコンは、工業の鋳物砂、耐火物などに用いられ、工業材料として重要な金属ジルコニウムの原料にもなります。

ジルコン12月の誕生石

ジルコンは歴史のある価値あるジェムストーン

宝飾品で使用されるジルコンは、放射性元素から殆どあるいは全く損傷を受けていない完全な結晶構造を持っています。


または、加熱処理で、放射線による石の損傷した結晶構造壊を幾分修復させています。


比較的内包物は少なく、未処理のジルコンの多くは、不透明あるいはスモーキーです。

 

ジルコンは、硬度は7.5と水晶より硬いのですが、欠けやすくリングなら耐久性を考慮したデザインにすることで傷みが少なくし、美しさを保ち続けられます。

 

ジルコンは、ダイヤモンドの代わりに上質な代替品として使われることもありますが、価値のあるジェムストーンなのです。

ジルコン12月の誕生石