ペリドット


ペリドットは「オリビン(かんらん石)」の一種で、オリーヴの葉の色に似ている金色がかったライムグリーンから豊かな萌黄色をしています。

 

ペリドットの語源は、13世紀の中期英語の「明るい点・ボタン」を意味する単語「ペリドート」が由来という説。フランス語で「不明な」を意味する「ペリトー」を語源とする説。ギリシャ語で「豊富」を意味する「ペリドナ」を語源とする説。アラビア語で「宝石」を意味する「Faridat(ファリダット)」を語源として古フランス語で Péritot と呼ばれた説が有力です。

 

紀元前1500年にエジプト人が紅海に浮かぶザバルガド島で採掘を始めて以来、太陽神ラーの金色の光を受け継いだ「太陽の宝石」と呼ばれ、危険から身を守ると信じていました。スミソニアン博物館蔵の世界最大のルースを始めとして、世界の博物館や王室の宝飾品を飾る巨大なペリドットの大半はここから採れたものです。

 

プトレマイオス朝の時代、この島は"Topazos"島と呼ばれ、採集された緑の宝石は18世紀までトパシオンと呼ばれていました。

ペリドット原石結晶

夫婦の幸福・和合

夜にも明るい緑の光を放つペリドットは、ローマ人には「夕べのエメラルド」と呼ばれました。中世の人々は、エメラルドとペリドットを混同し、200カラットのドイツのケルン大聖堂での三聖王の神殿を飾る宝石をエメラルドだと信じていました。

 

ハワイのオアフ島の岬の突端がキラキラと美しい光を反射することから、ダイヤモンド・ヘッドと名づけられましたが、実はペリドットだったそうです。さらに、夜の電光の下で色鮮やかな緑色に見えることから「イヴニング・エメラルド」とも呼ばれています。ハワイの先住民はペリドットを女神ペレの涙だと信じ、聖書ではモーゼに授けられアーロンの胸当てにはめこまれた「火の石」のひとつとされました。

 

オスマン帝国のスルタンは1300年から1918年の600年間にわたる統治の間に世界最大のペリドット・コレクションがイスタンブールのトプカピ宮殿に残されています。

 

エルサレムの城壁の土台石に使われた12の宝石のひとつであり、12使徒のひとりバルトロマイの象徴とされました。

 

パウダー状にしたペリドットは喘息の治療に使われ、熱の下がらない患者の舌の下にペリドットを入れると喉の渇きが癒されると言われました。ペリドットで作ったゴブレットで薬を飲むと、効果が上がるという言い伝えもあります。

ペリドット原石

ペリドットの産出する国

アメリカのアリゾナ州サン・カルロスは、細粒の結晶団塊中から透明な宝石質部分のみを取り出すため5カラット以上は稀ですが、小粒サイズは大量に採れます。世界最大の産地で、80%以上を供給しています。

 

1979年中国の河北省、宣化(Xuanhua)にアルカリ玄武岩の溶岩中に宝石質のペリドット団塊が発見されました。2000年以降量は少ないですが、広東省の水口山 (Xi Kuang shan) 産と北部の吉林省産も市場に出ています。

 

1994年パキスタンのカシミール地方の山中で発見され、過去最高のペリドットが採掘されています。一月で平均100kgの結晶が採掘されますが、ファセット級の結晶は3kg程度に過ぎません。しかし20~30カラットの大きなルースも稀ではなく最大では300カラットを越える記録的なルースが採れるなど、世界でも有数の産地です。

 

1960年代以降、世界でも最高品質のペリドットはビルマ(ミャンマー)のモゴク地区北部にあるピャウン・ガウン鉱山で産出しています。

 

ルネッサンス以前から19世紀にかけて欧州にある大きく美しい結晶は、ここで産出された可能性があります。

 

第二次世界大戦以降、不安定な国情のために細々とした採掘で大きな晶洞が発見されて100カラットを越えるルースが散発的に市場に出回ります。

Pt900ペリドットリング

希少性が高いが、手頃な価格が魅力的

太陽系の火星と木星とに間にある小惑星帯は、太陽系が出来た頃衝突で粉々になった天体のかけらから成る無数の破片の集まりです。この破片が大気中で燃え尽きずに落下した物が隕石です。

 

1772年にドイツの科学者ペーター・ジーモン・パラスがシベリアのクラスノヤルスク近郊に落下したパラサイト(石鉄隕石)から透明なペリドットの結晶を発見しました。

 

1887年にアメリカのケンタッキー州Eagle Stationで発見されたパラサイトからカットされたペリドットは、1900年のパリの国際博覧会にティファニー宝石店のクンツ博士によって出品され、現在はアメリカのニューヨークの自然史博物館に展示されています。

 

1951年にアルゼンチンのエスケルで発見された隕石からは30個ほどカットされ世界の鉱物フェアなどに出回りました。

 

2003年にペリドットは火星で発見され、地球以外の惑星で発見された最初のジェムストーンです。

 

近年、世界各地に新しい産地が発見され供給量は増えましたが、年間の推定供給量は100万カラットには達しません。

K18ペリドットリング

日本伝統技法緋銅の告知
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