このデザインが好き

先日、ご依頼を受けたジュエリー修理の中のひとつをご紹介します。
これはご主人のカフスです。チョウガイが上品ですよね。このカフスはほとんど使うことがないそうで、もったいないのでピアスにしたいとのことでした。

素材はシルバーです。刻印が入っていました。
まずは、この金具部分を切り落として、ピアスの針を立てなくてはなりません。シルバーの針ではなく、今回はWGを使用します。しかし、このチョウガイがあることでロウ付けすることができません。
つけたままで出来る加工を考えるのか、それともチョウガイを取り外すことを考えるのか。
ベストな加工を考える
針の位置を頂点から6㎜下がった処にして欲しいとの要望がありましたので、その要望を考えると上の写真のようになります。この場合はチョウガイを外すことが条件となります。そこで、チョウガイを外すことを試みます。
石とシルバーの間に接着剤があります。これを剥がすためにお湯に浸します。しかし、何度が繰り返すものの、一向に剥がれる気配はありません。そこで、沸き湯に浸してみます。これでも効果はありませんでした。チョウガイの面が広い分接着もかなりしっかりされている印象です。最後は、アセトンが入っている除光液を使用しました。それでも、結果的には失敗。
これ以上は、チョウガイにも負担が掛かってくる危険もあるので、断念しました。

最終的には、チョウガイはつけたまま加工する方向となりました。そこで裏にWGのプレートを使用してシルバー面に接着することにしました。このくらい面があればそうそう取れることはないかと思います。しかし、要望されていた6㎜という数値は難しく、頂点から7~8㎜下になってしまいます。1㎜、2㎜の誤差ですがジュエリーの場合には、それで印象が変わることもありますからそこはこだわりたいですし、依頼された方にも気がついてほしいと思っています。
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諦めが悪いのが、今回は良かったようです。なんと、片側だけ取れたのです!
取れたという事実が、それまで諦めた事に対して、再度やる気を起こさせました。無事に両方とも石が取れました。
これで最初の案でいけるということになりました。
カフスの素材はシルバーです。このシルバーにはメッキが掛かっていました。ニッケルが含まれています。このニッケルは実に加工するには邪魔な存在なのです。そこで、行うのはメッキの剥離という作業になります。これは液に漬けこみ剥離させます。
ところが、この剥離を行うメッキ業者は少ないのです。多くの職人はメッキを自分で剥がして作業しているそうです。なら、剥離の必要性はないように思えるかもしれませんが、加工の仕上がりに差がでるそうです。また、剥離した方が加工しやすいのです。ここは、キレイに仕上げてもらいたいので、職人がやりやすい状態にします。

メッキの剥離が終わった状態です。
金具のところは素材はシルバーではないということはこれで一目瞭然ですね。このカフスのデザインは、外側の半円部分がつや消しになっています。艶消す方法にもいろいろ道具によって異なる仕上がりになります。

加工から上がってきたピアスです。
再び、メッキを掛けています。ピアス針はK14WGです。位置もばっちりです!!
最後にクロチョウガイを接着して完成です。