工房の人情物語

ジュエリー職人を目指す水谷君

ここ台東の工房では、以前から彫金を習った方やジュエリー製作に興味がある人などを対象に、作業ができる場所として提供しています。年に数回、半年に、月に数回と通う方もいるそうですが、ジュエリー職人を目指して毎日のように工房に通っている若者が水谷君です。平日は会社勤め、就業後に工房で作業する毎日を8か月続けているそうです。とても素晴らしいですね。

「そもそも、なぜジュエリーを選んだの?」という問いかけに、以前からシルバークレイ(粘土)を使って彼女の誕生日にプレゼントをしていたそうです。その時、彼女が喜ぶ姿を想像しながら手作りしたこと、見事に想像したような結果になったことが彼にとってとてもよい思い出になったそうです。この喜びをもっと多くの方に伝えたい、そのお手伝いがしたいというのが、彼との最初の頃の会話です。


シルバーで手作りしたスプーンペンダントがかわいい

彼の姪っ子の誕生日にプレゼントするそうです。

曲面の裏凸部分には姪っ子さんの名前と誕生日が手彫りされています。

さらに柄の部分には誕生石のルビーとレッドスピネルがついています。

ルビーは理解できますが、レッドスピネルはなぜ?


制作をしている最中に、自分の宝石が入った箱を床に落として全部散らばってしまったそうです。それらを拾い集めている時に、「こんなきれいな宝石があったんだ」と手にしたのが、このレッドスピネルだったそうです。スピチュアルとかではなく、宝石には不思議なエピソードが多々あります。それ以上の理由は、必要ありませんね。


銀のスプーンを贈る習慣と意味について

ちなみに、ヨーロッパでは銀のスプーンを誕生祝に贈る習慣があります。

  • 古代ギリシアでは「コクレアレ」という名前のスプーンが使われていたことが分かっています。このコクレアレは食具としてだけでなく、悪運から身を守るシンボルとしても使われたそうです。
  • 五世紀にローマ帝国が滅びると、食具としてのスプーンは、ほとんど姿を消しました。スープのような液体も、皿から直接すすったり、手でかき出して食べていたそうです。だから今でも、スープは「飲む(drink)」ではなく「食べる(eat)」という表現を使います。14世紀ごろから次第にテーブルに再登場し始めますが、当時は一部の特権階級の「貴重品」扱いであり、庶民がそうそう使えるものではありませんでした。
  • そのため、「銀のスプーンをくわえて生まれる(Born with a silver spoon in one's mouth)」という言葉ができました。銀のスプーンは高級ですから金持ちの象徴、あるいは銀のスプーンは幸福の徴(しるし)でした。そこから「幸福に育つであろう子供」の善とをスプーンになぞらえたと言われています。
  • 長いスプーンを使うことは一般に悪魔と言われ、「彼と一緒に長いスプーンを使用する」と言えば「彼は油断のならないヤツだ」という意味になります。その他に「彼はスプーンの時代を過ぎた」と言えば「彼はもう子供ではない(スプーンを使うような世代ではない)」、「彼のスプーンを吊す」と言えば「彼は死んだ」ことを表します。