和名で"電気石"と呼ばれているトルマリン。
スリランカのシンハリ語で「土で出来た小さなもの」を意味する"turmali(トルマリ)"が由来している説と、シンハラ語で「混合宝石」を意味するトラマリニに由来している説があります。
過去には他のジェムストーンと混同され一緒にされてしまったという歴史的ないきさつがあります。
非常に複雑な化学組成を有するトルマリンのグループには、シリコン、アルミニウム、及びホウ素の元素を共有しますが、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、クロム、バナジウム、フッ素、そして時には銅など12以上の鉱物種が認められています。
トルマリンの主要種類は、リシア電気石、リディコータイト、苦土電気石、ウバイト、および鉄電気石です。幅広く変化する化学組成により、宝石種の中最も幅広い色彩範囲色域があり、さまざまな色合いで発生します。
苦土電気石とウバイトの混合物は、色がブラウン、イエローイッシュブラウン、レディッシュブラウン、または黒に近い色です。また、豊富なグリーンの色相を作り出します。サバンナトルマリンと呼ばれる明るいイエローは、苦土電気石とウバイトの混合物です。ザンビアのルンダジ地域産の、明るい黄色のトルマリンは「カナリアトルマリン」と呼ばれています。
鉄電気石は、ブラックで鉄が豊富です。微量の鉄、場合によってはチタンがグリーンおよびブルーの色を誘導していると一般的に信じられています。マンガンは、赤やピンク、場合によってはイエローを作り出します。
イタリアの西海岸近くにあるエルバという島で発見されたエルバイト・トルマリンの数多くの変種の中には、バーデライト(緑色)、インディコライト(青色)、ルベライト(赤色)などがあります。
ラテン語で「赤から生まれた」という意味の「ルベリウス」に由来するルベライトは、ピンク、レッド、パープリッシュレッド、オレンジ気味のレッド、あるいはブラウニッシュレッドのトルマリンの一種です。
19世紀、ブラジルで発見され、1983年頃発見されたオウロ・フィノ産ルベライトは宝石界で伝説的な地位を得ています。1985年には鉱床は掘り尽くされてしまいましたが、今でもミナス・ジェライス州を中心に、主要な供給国となっています。
19世紀末から20世紀初頭にかけては、南カリフォルニアのパラ地区も重要な産地でした。1998年、新しいトルマリン鉱床が西アフリカで発見されました。ほんの数年で、1000キロ以上の原石が地中から運びだされました。そして登場したときと同じくあっという間に、なくなってしまいました。2007年、モザンビークで鉱床が発見されました。
1989年ブラジルのパライバ州や2001年アフリカ、モザンビークで発見されましたパライバトルマリンは、きわめて輝きが強く、光が弱くても光を放っています。
電気のように鮮やかなウィンデックスブルー、ネオンピーコック色、強烈なターコイズ色、圧倒的なトワイライトブルーがあります。
パライバトルマリンは少量の銅にマンガンと鉄です。
銅の量が多いほどブルーやターコイズの色が強くなりますが、マンガンが多くなるとバイオレットから赤の色合いが強くなります。
鉄はグリーンに発色する要素と考えられています。
非常に強い多色性のあるインディコライトは、濃いバイオレチッシュブルー、ブルー、グリーニッシュブルーのトルマリンです。
1カラットに満たないものが多いので、大きいものは非常に希少で、トルマリン族の中でも特別だと賞賛されています。
東アフリカで発見された濃いグリーンのクロムトルマリンは、ほとんどがクロムではなくバナジウムでトリートメント処理されています。
バイカラートルマリンは、色を生じる成分がそれぞれ別のタイミングで結晶に入り込んで、色の違う層を作りました。
この特徴を見せるようにカットされたバイカラートルマリンは、通常はピンクとグリーンのコントラストがはっきりと見られます。
トルマリンの中には、複数の色を示すものもあります。
最も一般的な組み合わせの1つは、パンの塊のように断面を薄くカットされた、グリーンとピンクのウォーターメロントルマリンです。
シャトヤンシーと呼ばれるキャッツアイ効果を示します。キャッツアイ・トルマリンは、グリーン、ブルー、ピンクがあります。
1800年代終盤、トルマリンは、ティファニーの宝石鑑定士、ジョージ・F・クンツの努力によってアメリカの宝石として知られるようになりました。
同氏は、1892年メイン州とカリフォルニアのトルマリン鉱床について記し、彼らが生産した石を賞賛しました。
しかし、当時のトルマリンの最大市場は中国でした。カリフォルニア州サンディエゴ郡から採れたピンクおよびレッドのトルマリンの多くは、中国の皇后未亡人ツー・シーがその色を特に好んだので、中国に出荷されました。
サンディエゴ郡の有名なトルマリン鉱山には、トルマリン・クイーン、トルマリン・キング、スチュワート、パラ・チーフ、そしてヒマラヤがあります。
1912年中国政府の崩壊とともにヒマラヤ鉱山は、大量生産を中止しました。サンディエゴ郡の他の鉱山では、依然として宝石質のトルマリンを散発的に生産しています。
トルマリンの供給は、1980年代と1990年代のブラジルのミナスジェライスの宝石鉱山地区にいくつかの大きな鉱床が発見された20世紀の前半に拡大し始めました。
その後、1950年代から、ケニア、タンザニア、モザンビーク、マラウィ、ナイジェリア世界中の国々で発見され、マダガスカルとアフガニスタンは、上質のレッド・トルマリンを生産してきました。
もう1つ大きな特徴。
柱状の結晶をしているトルマリンの両端は、プラスとマイナスを帯電し、加熱や摩擦することでマイナスイオンを発生させるといわれています。
このマイナスイオンには、水や空気を浄化し、心身のストレスやイライラをやわらげてくれる効果があるといわれます。