グレー系あこや真珠
今回は、お母さまから譲り受けた『グレー系あこや真珠ネックレス』の修理について、ご紹介させて頂きます。
【ご持参された品目】
・ネックレス
・珠3PC
・ペンダントネックレス
これら3点は元々、1本のネックレスで組まれていたもので、手先の器用なお母さまがご自身で加工されたとのことでした。
確かにネックレスを通している糸のエンドが、左右異なった仕上がりになっていました。
でも、あまり緩みもなく組めているので、素晴らしいです。
ご依頼の内容は、これらをまとめて、さらに45cmの長さにしたいということでした。
不足分を補う珠足しに必要なグレー真珠を探すため、一旦お預かりさせて頂きました。

ネックレスからパールを外す
まずは、パールペンダントネックレスから着手します。
パールの穴にネックレスを貫通させているのですが、パールの穴径よりもネックレスの線径が太いため、穴を楕円形に広げて通していました。
そして、パールはネックレスの中心部分にしっかりと固定されていました。
その珠の中には接着剤が固まっていて、ごっそり取り除きました。
それによって可動した段階までは良かったのですが…。
取り出す側のチェーンの1パーツに変形があり、それが邪魔しており、少しずつ慎重に通過させていました。
しかし、その部分が穴の中で引っ掛かり、再び動かない状態となりました。
再び可動したのですが、方法を再検討する必要がありました。
経緯をご連絡して、引き輪側にある丸環を切断して取り外す方法に変更させて頂きました。
切断した丸環はもう一度ロウ付けをします。
慎重に引き輪側へと珠を移動していくと、またしても途中で穴の中で引っ掛かる箇所がありました。
スムーズにいかない感覚から、前回と同じ状況に陥る可能性もあり、作業を中断しました。
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パールを外したネックレスは、そのまま使用したいというご要望でした。
しかし、この段階でご要望に応えることが、とても難しくなりました。
当初は接着剤さえ取れれば、容易に外せると考えていました。
ここまでの作業を通じて、本当に上手に加工されたことに関心しました。
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最終的には、チェーン部分を切断して取り外す方法でご了承して頂きました。
切断箇所を輪から珠の可動範囲内のチェーン部分に変更しました。
変形パーツの部分の切断も考えましたが、その手前で引っ掛かる箇所があり、切断しても珠が外せないという可能性もありました。
ここまできたらミスはできないので、確実に外せる可能性の高い、可動範囲内を選択しました。
これで、4pcを確保することができました。
珠探し&珠合わせ
最後は、珠足しに必要となる珠探しをします。
グレーではなく『グレー系』と明記した理由は、グレーには色の濃いものから淡いものまで、いくつか分類されるからです。
まず、その中から一番色味が近いものを選びます。
さらに、その中から珠合わせをしていき、最終的に品質の良い4珠を選びます。
これで、8pcを確保することができました。
加工の準備が整ったところで、修理内容のご連絡をします。
【グレイパールネックレス加工】
・本体のネックレス 約39.5cm
・4珠 約2.9cm
⇒穴の変形により、両端部分ではなく内側に組み込みすべての珠を使用します。
・グレイパール7mmの珠足し
⇒3pc 約2.1cm 合計長さ44.5cm
⇒4pc 約2.8cm 合計長さ45.2cm
※パールは色合いが近いものを選んでおりますが、若干異なります。
※写真を撮り忘れてしまいましたが、色目は確認し手元にはありませんが、確保しております。
※両端に組み込みます。 なお、長さの仕上がりについては、若干異なる場合があります。
合わせて、お見積りや納期などもお伝えして、OKを頂いてから加工を進行させて頂きました。
完成
工房にお越し頂き、納品させて頂きました。
ネックレスを着用して頂くと、イメージとおりの長さとなり、とても喜んで頂けました。
とても綺麗なあこや真珠でしたので、色々な場面で身につけて、長くご愛用して頂ければ幸いです。

小粒のあこや真珠が装飾されているクラスプ金具は、今では希少になりました。
ただ、これまで『金具の着け外しがやりずらい』というご意見もありました。
そこで確認すると、ご本人さまは気にならないということでした。
新しいクラスプに交換することも選択肢にはありますが、そのまま利用させて頂きました。
あこや真珠は、親から子へ、子から孫へと受け継がれていくものだと考えております。
想い入れがあるものだからこそ、関わる際には大切に丁寧に対応したいと心掛けております。

グレー系の珠足し
今回のグレー系の珠探しでは、お預かりしたグリーングレーよりも少し淡い珠を選定しました。
しかし、テリがある綺麗な珠なので、合わせた時の相性はとても良い印象でした。
上の写真で確認していただくと、わかるかと思います。
また、物理的な理由はわかりませんが、肌や生地にのせると干渉されてグリーングレーに見えるのです。
つまり、視覚的には珠を足したということがわからないくらい同じように見えます。
理想は同じ珠があればよいのですが、実際にはそれはとても難しいことです。
できるだけ違和感のない、全体のバランスを損なわないレベルで判断します。
白色と比較すると、グレーの方が珠数は少ないです。
そういう点からは、ご依頼に対してすべてお応えできることは難しいかもしれません。
しかし言い換えれば、グレー系の珠足しを依頼したい人にとっては、依頼先を探すことはもっと難しいことかもしれません。
珠足しについては、1珠からご依頼を受けております。
何かあれば、お問い合わせして頂ければと思います。