正当な経験

打ち合わせ


結婚指輪を手作りされた方で、最初は彼だけが打ち合わせに来られてから、次にお二人そろって打ち合わせを行い、4月に彼と最終デザインの打ち合わせ。合計で3回の打ち合わせです。おふたりは、仕事が忙しく、なおかつ、休みがなかなか合わないという理由はあります。それでも、この打ち合わせ回数を聞いて、どう思いましたか?

 

これは、とても意義のある事だと受け止めています。コンセプトのある結婚指輪をふたりで手作りするメリットのひとつには、後々もお互いが語り合えることがあります。そのことについて綴りたいと思います。

手作り結婚指輪太陽

整理と整頓

最初に、「記憶する」と「思い出す」では意味が異なり、それぞれ次のようなことが言えます。

  • 「記憶する」=「整理」
  • 「思い出す」=「整頓」

ここで大切な事は、『記憶することが重要でなくて、思い出すことが重要である。』ということなのです。では、思い出す力をつけるためにはどうするのでしょうか?

 

それは、たくさんの「正当な経験」をすることなのです。ここで、正当な経験って何?と思うでしょう。正当な経験とは、自分が全力で立ち向かった体験を、記憶として書き綴った心の記録のことを意味します。

手作り結婚指輪太陽

体験と経験

次に、「体験」と「経験」では意味が異なります。体験とは、行為に伴って起きる表面的な知覚を言います。経験とは、心の中に積み重なっている記憶の絵ガラスに喩えられるように、心の記録を何枚も重ね、遠近法的に意味づけした結果を言います。ここで結婚指輪を選ぶという行為は、体験です。

 

それに対して、結婚指輪を自分で手作りすることは体験…いえいえ違います。本当の自分で手作りするとは『経験』であるはずなのです。自分が本当に欲しいデザインを考える、そのデザインを自分で制作する。完成した指輪を身につける。すべてが、正当な経験となり、たくさんの「自分の想い」を込めて作ることは、「思い出す力」を高める役割を指輪に込める作業と言えます。

些細な事も感動と喜びに変わる

キャスト(鋳造)後の結婚指輪

これは、制作工程のキャスト上がりの写真。まだ、湯道がついた状態です。人は、一見して美しいものに眼が奪われますが、この研磨前の段階でも美しいと思えるでしょうか?この指輪の物語(体験者)と気持ちを共有しているからこそ、この段階でも美しいと感じます。この指輪を見て、その時のことを思い出し、感動と喜びを感じるのです。

 

「情報脚気」に洗脳された人々は、与えられた選択(検索)だけしか出来ず、自分の時間を創造することができません。おふたりの絆をさらに深めるためにも、ふたりの証に相応しいコンセプトを決めましょう。そして、ふたりで共同作業をしながら「正当な経験」を育んで欲しいと願います。