宝石の取扱心得

精選


当工房では、ダイヤモンドや誕生石などの宝石ルースは、サンプルとしてお見せするもの以外に在庫は所有していません。「在庫がある」と「在庫がない」それぞれのメリット・デメリットを考慮した結果、「ご要望があった際に、宝石ルースをご用意する」というスタイルで対応すると決めました。なお、メリット・デメリットの詳細については、ここでは割愛させて頂きます。

 

まず最初に、宝石の取扱について、「当工房が心掛けていること。必ずお約束すること。」をお伝えしたいと思います。それは、「宝石の大きさや個数に関係なく、全て自分の目で精選します。」精選とは、特によいものだけをえらび出すこと。えりぬき。よりぬき。という意味です。厳選という言葉もありますが、厳選は、厳重な基準で選ぶことを意味します。

厳選ではなく精選の理由

個人的な解釈になるかも知れませんが、厳選は減点法(マイナス)であり、精選は加点法(プラス)である。と考えます。一般的なプロセスは、最初に宝石選びから始まることが多いので、宝石がメインとなる印象があります。しかし、手作り指輪では、ダイヤモンドや誕生石などの宝石がメインではなく、作る方の指輪がメインになります。最初の始まりから完成までのプロセスの順序が違うのです。もし、宝石がメインであれば厳選という言葉を用いますが、「作った方の想いのカタチに最も相応しい宝石をお選びする。」という意味を込めて精選なのです。

 

また、こちらも個人的な解釈になるかもしれませんが、厳選は理論的であり、精選は感覚的でる。と考えます。一般的に作業の手間暇の時間効率を考えれば、宝石の選定は宝石卸業者に任せるか、もしくは、独自に選定基準を設定し、誰でも厳選することができる仕組みを作ります。そのため、厳選したものから欲しいものを選ぶというサービスが出来上がります。しかし、当工房の場合は、作る人の要望から宝石を選ぶ基準を設定しています。そのため、作る人の好みを理解している自分が選ぶことが最も効率が良いという結果になります。

宝石の精選

精選の時間

精選する宝石のサイズは、最小のもので直径1.0mmのラウンドカットです。ダイヤモンド以外の宝石(貴石・半貴石)は、色や質でいくつかロッドに分類されていますが、同じロッドだとしてもひとつひとつカットが違います。


例えば、ラウンドカットでチェックする項目

1. テーブル面の広い、狭い。

2. ガードル部分の欠けの有無

3. 真円、楕円

4. キューレットの位置

5. パビリオンの深い、浅い

6. ファセット面の統一性
などを総合的にチェックして、最後に指輪に合わせます。

 

1つの宝石を精選するのに、費やす時間は1時間くらいです。右手にはピンセット、左手はルーペを持ち、ピンセットで宝石を飛ばさないように摘んでは確認して離し、摘んでは確認して離すの繰り返しです。たくさんの数があるので、見逃さないように確認していくので、集中力と忍耐力がそれなりに必要となります。

 

でも、始める前から納得できる宝石が見つかると信じていますから、それほど苦だと感じません。それよりも、見つけるまでの過程や、見つけた時の喜びや充実感を味わえることを知っているので、毎回楽しさの方が上回っています。何よりも、自分が「(喜んでくださる姿を想像しながら)これしかない!」と自信をもって言い切れること。自身をもって作られた方へ報告ができることが自分の責務でもある、との考えがあるので、ここはこだわりたいし、そういう想いで精選していることを知ってもらいたいと思います。

 

手作り指輪では、作る人の想いがカタチになります。指輪に宝石が必要か不要かを決めるのも、最終的にはご本人さまの想いにお任せしています。だからこそ、必要となれば、自分はその想いを受け継ぎ、想いのカタチに最も相応しい宝石をお選びします。完成を楽しみにして待っている人がいるからこそ、自分にできる一番のやり方で期待に応えていきます。