緋銅オーダー制作期間を通常通りに戻します

1ヶ月


5月から緋銅のオーダーが集中したため、制作期間を2~3ヶ月に変更しておりました。

 

8月になり落ち着いてきたこともあり、通常の1ヶ月に戻すことにしました。

 

この間、様々なオーダーを頂き、作品を作りました。

 

本当に制作しているときは、幸せな楽しい時間でした。

 

これまで作ったことのない作品ですから、ひとつひとつ課題と向き合いました。

 

作品の感想を頂く度に、作家としての自覚も芽生え、作品作りの心の支えになりました。

 

しかし、その中で、緋銅にできるかどうか自信がなかったのが、サイズ20号越えの緋銅のリングでした。

内径が広い

緋銅リング

このリングは、すべて失敗した作品です。

 

これまでの緋銅リングの火入れのやり方と同じです。

 

このやり方で、サイズ17号まで成功してきました。

 

しかし、やはり20号は別次元でした。

 

一見綺麗に見えるかもしれませんが、全周を確認すると色ムラや溶けている箇所があります。

 

見極めのタイミングは、これまで以上に難しかったです。

ホームランでは駄目

火入れ

緋銅のやり方は、最初の頃とは違っています。

 

YouTubeにアップしている動画は、初期のやり方です。

 

写真のやり方は、現在のやり方の主流になっていて、テレビ放送でも、緋銅体験でも使っているバーナーです。

 

これまでのリングも、これで緋銅にしていました。

 

1度目は、良いところなしの失敗。

 

2度目は、もしかしたらの望みを見つけた失敗。

 

3度目は、後もう少しというところで失敗。

 

この結果に、「ホームランでは駄目」という職人からアドバイスを受けます。

 

確かに、2度目の失敗の後、違う方法も考えましたが、3度目の正直という思いがありました。

 

違う方法とは、テレビ放送でも丸皿を緋銅にするために使っていた、大きなバーナーです。

 

これまでも、この大きなバーナーに切り替えることで、成功させてきました。

 

ただ、最初から火入れのやり方に懸念があり、今回はすぐに試さずに、後手に回しました。

 

つまり、今回ばかりは、自信がなかったのです。

作品レベルの緋銅リングが誕生

失敗した緋銅リング

大きなバーナーでは、最適な火入れができる環境を整えました。

 

制作から1ヶ月が過ぎていましたし、いよいよ納期日も迫ってきました。

 

思いつく限りのことを試しましたが、結果は失敗に終わりました。

 

このバーナーでも火入れは難しいと、現実を受け入れるしかありませんでした。

 

「緋銅リングのサイズ20号は、もう無理かもしれない。」

 

写真は、これまで失敗したリングです。

 

ギブアップ寸前まで、追い込まれてから、まだ試してないことがあると気づきました。

 

理論的には成功できるはず。

 

同時に、身の危険を心配しました。

 

大丈夫なのか?

 

これまでも、常に壁を乗りこる時には、自分の中にある恐怖心を克服してきました。

 

今回も同様な状況でした。

 

確認している内に、これならできるかもしれない。

 

5本のリングを作り、そのうち、1本だけ作品といえるレベルの緋銅リングが完成しました。

 

ついに、20号の壁を乗り越えることができました。

 

同時に、このやり方は、これまで以上に安定した綺麗な緋銅作品を作ったり、デザインの幅を広げる可能性も秘めています。

一ヶ月で別人

リングの制作は、工程も多く、使う道具も増えます。

 

とても体への負担が大きいです。

 

それでも、7月中は、オーダーリングを中心に制作の活動をしました。

 

その結果、「一ヶ月前とは別人のように上手くなっている」と職人から言われました。

 

確かに、体への負担を軽減するために、ひとつひとつの動作を見直し、改善しました。

 

工房にいる時間も限られていたので、作業も集中して行いました。

 

作業の区切りの良いところではなく、自分の気持ちの区切りの良いところを優先しました。

 

その結果、効率的に、早く、綺麗に仕上がっていると、自分でも実感できました。

 

技術力が上がったことで、これまで以上にオーダー制作の対応も迅速にできるという自信にもなりました。

 

それもあり、オーダー製作期間を通常通りに戻すきっかけにもなっています。

新しいやり方について

これまでオープンスタンスでしたが、今回の新しい技法については、完全黙秘。

 

しばらくの間は、非公開にすると決めました。

 

今現在、予定はありませんが、テレビ取材のオファーを頂いたときに、公開したいと思います。