アクティブリスニング【聞くと聴くの違い】

カウンセリングのテクニック


アクティブリスニングは、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャース氏が提唱したカウンセリングのテクニックです。このテクニックを紹介しようと思ったのは、「人間には誰しも自己実現する力が本能的に備わっている」という観点から、人の成長と可能性の実現を促す環境を整えるカウンセリングが必要であるという理論に共感したからです。また、ロジャース氏は、心理相談の対象者を「患者」ではなく、「クライアント」と名付けたカウンセリンの父とも呼ばれています。

「聞く」<「聴く」

「聞く」の意味を持つ英語は、「hear」(ヒアリングの原形)。聞くは、意識とは関係なく、自然と耳に入ってくるというニュアンスを持つ言葉です。それに対して、「聴く」の意味を持つ英語は、「listen」(リスニングの原形)。聴くは、耳を傾けて意識的に聴くというニュアンスの意味があります。

 

このことから、アクティブリスニング(active listening)を日本語に訳すと「積極的傾聴」となります。このテクニックのポイントは、「受容の精神」と「共感的理解」です。これは、話し手が伝えようとする内容を、聴き手が積極的に受け入れること、共感すること、理解しようとすることで、話しやすい環境を作りだし、聴くことを通じて話し手の抱える問題の本質を明確にしていくプロセスを共有します。アドバイスを行うのではなく、話し手が自分自身で問題解決を図れるようサポートするのが、アクティブリスニングの活用法です。

基本的な態度

提唱者のカール・ロジャースは、アクティブリスニングのテクニックを使うポイントとして、聴き手(カウンセラー)に必要な3つの基本的な態度があると述べています。基本的な態度は、話し手と聴き手の双方の信頼関係を高め、相手の本音を引き出すことができるようになるそうです。

 

1. 自己一致

聴き手は、自身の気持ちに嘘がなく、純粋の状態であること。その上で、『自分の自己概念』と『感情・思考・態度・行動の言動』が一致する状態に整えます。自分の心の中での感情や価値観に対して、観察や洞察によって、自己分析をすることで、自分の中で違和感や苦痛を抱えていない矛盾のない健全さを維持することができます。聴き手が誠実であり、正直であれば、話し手は本音を語りやすい環境となり、双方の信頼関係を高めることができます。

 

2. 無条件の受容

受容と肯定は違います。ざっくり言うと、結果に対して、”行為”を受け入れるのは肯定で、”人”を受け入れるのは受容です。これは、聴き手が考えや行動に対して、否定や評価もせずに、受容すると、話し手は自分が尊重され、大切にされていると感じます。その許された体験から、話し手は新しい価値観に気がつきます。その価値観を理解しようと、今度は話し手が、相手の話に耳を傾けることを始めます。さらに、相手の立場を想像して、その感情を汲み取ろうとします。つまり、受容することで、話し手が自分自身を受容するきっかけにも繋がるのです。

 

3. 共感的理解

心理学の共感とは、話し手との感情共有を意味します。理解とは、聴き手が客観的に、話し手の立場に立ち、話し手と同じ視点で物事を捉えることを意味します。「あなたのことがわかる。」ではなくて、性格も考え方も、生活環境も、これまで全く違った人生を歩んできた人ですから、「あなたのことを知りたいから、教えてください。」という姿勢が大切です。話し手の人生を自分自身の人生のように感じることで、信頼関係を築きくことができますが、つらいこと、苦しいこと、思い出したくないような問題を抱えていることもあるので、転移・逆転移が起こる可能性があり、心理学の共感は難しいと言われています。くれぐれも、共感的理解の本質は、「わたし」と「あなた」の完全な分離であることを忘れないでください。

言葉と態度のテクニック

最後は、聴き手の傾聴の姿勢です。2つの方法があり、ひとつは言葉を使う「バーバル・コミュニケーション(言語的コミュニケーション)」、もうひとつは態度で伝える「ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)」です。

 

「バーバル・コミュニケーション(言語的コミュニケーション)」には、5つのポイントがあります。

 

1. 目線

話し手が話をしているときは、聴き手は相手の目を見ます。話し手は、自分の話をちゃんと聴いてくれていると感じます。ただ、普段の生活の中では、じっと見られることに慣れてなく、居心地の悪さを感じる人もいます。その時は、目線の位置を外し、また目を見て聴く。それを繰り返すことで、徐々にお互いに自然と目を見て話せるようになります。

 

2. 自然な表情

話し手の表情に合わせるようにして、その人の気持ちを汲み取ろうとする姿勢を見せることが大事です。しかし、無理に笑顔を作る練習は必要ありません。共感的理解ができれば、表情は自然にできるようになります。

 

3. 声のトーン

声は、声の高低、言葉の抑揚などあり、話し手が周りに影響を与える力があります。聴き手が話し手の気持ちを理解する重要な要素でもあります。声と感情は、密接な関係にあります。話し手が「自分の気持ちを理解してもらっている」と感じてもらうために、話し手の会話の内容、話し方、声のトーンから伝わる感情を無条件の受容して、それに適した自分の声を適切に使い分けながら、話しやすい環境を作ります。

 

4 . 姿勢と体の向き

聴き手がリラックスした状態は、話し手にも心地よさが伝わり、話しやすい環境作りになります。体の向きは、話し手の正面もしくは斜め前で体を開いてゆったりとくつろいだ状態が良いと言われています。また、話をうなづきながら聞くのも、無条件の受容となります。注意点は、話を聴く姿勢の印象は話し手によって感じ方が違う場合があります。例えば、身を乗り出す態度は、「興味をもって聞いてくれている」や「集中している」と感じる人もいれば、「自分のスペースを侵害される」と感じる人もいます。そのほか、腕組みや貧乏揺すり、側にあるものをいじる等のさりげない仕草は、話し手が緊張したり居心地が悪く感じたりします。それによって、会話に影響する場合もあるため、相手の動作をよく観察し、心地よい距離感を図る必要があります。

 

5. スキンシップ

話し手が心細い状況のときに、励ましの効果があるといわれているのがスキンシップです。共感的理解の態度の現れとして、握手や、肩を軽くたたくなどです。注意点は、「他人に触られること」を嫌がる話し手もいますので、自然な流れで行う必要があります。

 

「ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)」には、4つのポイントがあります。

 

1. 相槌(あいづち)

バーバル・コミュニケーションの4.姿勢と体の向きでもありましたが、相槌の仕方は同じではなく、「うんうん」「そうですね」「なるほど」「わかります」など、いろいろな相槌を使うと、話し手が話しやすい環境を作るのに効果的です。

 

2. 共感と繰り返し(オウム返し)

話し手の内容をまずは受け止めます(受容)。自分が話し手の立場ならどう感じるか?と考え、話し手の気持ちに共感していることを伝えます(共感)。そして、話し手の言葉を自分の言葉で繰り返す、また、簡潔にまとめることで、親身になって聴いている態度を示す(理解)。ここでは、自分の理解が相手の意図と違うかもと心配する必要はありません。間違っても話し手が言い直す機会となり、会話を通じてお互いの理解を深めることができます。

 

3. 言い換え・反射

2.の繰り返し(オウム返し)が話し手に上手くいかない場合は、話し手の話や言葉を違う言い方で返事をすることで、話し手の話しやすい環境を作ることができます。

 

4.要約・明確化

話し手の「感情」や「考え方」について、はっきりと意識していない不明確な表現を、聴き手がまとめて、適切に言語化(意識化)をして、明確化することで、お互いの理解を深めることができます。。

 

5. オープン・エンド・クエスチョン(開かれた質問)

相手の話を広げる質問が、オープン・エンド・クエスチョンです。話し手が「いつ、だれが、何を、どこで、どうした」という点を、限定的な回答にならないように質問を工夫し、確認したい内容を押さえながら会話をして、引き出していくことが重要です。注意点は、質問が「詰問」にならないこと。相手が問い詰められていると感じると、答えづらくなり、逆効果です。

逆効果には、YES/NOで答えられる質問はクローズド・エンディング・クエスチョン(閉じた質問)もあるので気をつけてください。

自己一致が最も重要で深い

聞くと聴くの違いは、理解していただけたでしょうか?

私、個人の意見としては、テクニックよりも基本的な態度が重要だと思っています。その中でも「自己一致」が重要だと考えています。「聴き手は、自身の気持ちに嘘がなく、純粋の状態であること。」人は誰でも、嘘をついたり、偽ったりした経験があるはずです。また、大人になれば、社会に出れば、話し手も聴き手も同じ世の中を生きています。環境の違いはありますが、情報社会になり毎日色々な出来事を簡単に知ることができる世の中で、自分の中に違和感や苦痛を抱えていない矛盾のない健全さを維持することは、決して容易いではないと思います。

 

自分の自己概念を変えるサイクルは、創造と破壊と進化と考えます。このサイクルを繰り返すことで、自己一致の状態へと変化することができます。これらのテクニックを自然に使うには、まずは自己一致のレベルが高くすることです。また、自分の感情・思考・態度・行動の言動を一致させるためのポイントは、自分が幸福である状態が望ましいです。心に自我の願望や怒りがあったり、目先の誘惑にハマれば、不一致の状態からは抜けられません。自分自身を愛せない人に、他人を愛することはできません。自己一致の状態によって、真の自信になります。真の自信とは、自分自身を疑う気持ちのない、純粋の状態から自分自身に絶対の信頼ができるようになります。

 

リンプラでは、純粋な想いを大切にしています。純粋な想いにこだわるからこそ、手作り指輪を通じて、理念である感動と喜びを増やすことを実現できると信じています。今年は指輪の向こう側にある世界を、もっとわかりやすく伝わるように文章にすることを考えていきます。