エンハンスメントとトリートメントの違い

天然宝石の人工処理に関係する2つの言葉

 

「エンハンスメント」と「トリートメント」

 

以前は、宝石の処理は全てトリートメントと称されていました。

しかし、宝石の本来の価値と見かけ上の価値にかなり大きな差が出ることや効果が永続し難いという問題や、一般ユーザーに与える不透明感さがありました。

そこで、1996年から宝石の処理はエンハンスメント(改良)とトリートメントの二つに分けられるようになります。

このような経緯から、エンハンスメントはトリートメントの中から生まれた考え方だとも言えるでしょう。

エンハンスメント


「エンハンスメント=enhancement(改良)」

 

本来、天然宝石のもつ性質を損なうことのない範囲で、人工処理を施し、潜在的な美しさを引き出す技術です。

潜在ですから、同種類の石を同じ条件でエンハンスメントしても、その効果は同じとは言えないのです。

 

ルビーやサファイア、アクアマリンやトパーズの加熱処理(ヒート・エンハンスメント)。

例えば、サファイアの青色の原因は、酸化チタンです。この酸化チタンが石のなかで、針状に固まっている場合、いい青色は出せません。そこで高温で加熱し酸化チタンを溶かすと、色の淡かったサファイアが、深く濃い色合いのサファイアに変わります。これは人工処理でも、天然サファイア本来の性質に沿った美しい改良です。

 

また、翡翠(ジェダイト)の光沢を良くする為のワックス等による含浸処理やエメラルドの内部の亀裂に『無色』オイルや樹脂等をしみこませ、亀裂を目立たなくすることで色を良くする処理も改良と考えられます。

 

鑑別書には、「天然○○○には、一般的にエンハンスメントが行われています」のコメントが記載されます。

トリートメント


「トリートメント=treatment(改変)

 

天然宝石の性質に関係なく、人工処理を施し、色や外観を変えようとすることです。

改変後の結果は技術レベルによって大きく左右されます。

 

色の薄いサファイアを、合成配分された着色剤の粉末といっしょに加熱処理して色を濃くする処理(表面拡散処理)や、エメラルドに、『有色』オイルや樹脂を使って処理する場合は、トリートメントの人工処理です。

 

トリートメントには、放射線照射、着色、コーティング、加熱、含浸が有ります。

 

鑑別書には、「天然〇〇〇(処理石)」や『トリーテッド○○○○』と記載され、さらに「〇〇〇による〇〇〇の改変を認む」とか「改変を目的とした〇〇〇を認む」というようなコメントが記載されます。

海外では日本よりも情報開示されていた


市場に出回る主要な一般宝石の多くは色を良くする為の何らかの処理を施されています。

そもそも世界中の鉱山から産出される原石の中でも、カットしてそのまま宝石にできる品質はごくごく僅かしかありません。

そのままの状態では、宝石としての魅力に欠けますので止むを得ず何らかの処理をしなければ宝石に相応しい価値にならないのです。

 

そのために、人工処理という技術もカットの技術と共に進化成長してきました。

もちろん、ナチュラル・ナチュラル(天然の色の天然石)の無処理で綺麗な宝石は存在します。

しかし、ごく希少な産出量のため、所有できる人は世界中でも限られます。

当然のことですが、価値は高くなり、高価な金額で取引されています。

 

現在は、2004年に施行された『宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法に関する規定』によって、宝石に処理がなされているかの極めて明確で消費者にも分かり易い内容となっています。

これからも、多くの人々が宝石を持つ喜びを提案していきたいですからね。