工房の未来

「日本のジュエリー業界に新しい旋風を創り出す」

 

日本のジュエリーの歴史ってご存知ですか?

 

江戸時代以前より受け継がれた装剣金工師、簪(かんざし)や櫛(くし)などの小間物(アクセサリー)を鼈甲(べっこう)、象牙、珊瑚や銀などで作る職人や、仏具の職人がいました。

 

しかし、明治の中頃になると、廃仏棄釈(はいぶつきしゃく)の流れに押されて、仏具の職人たちは神道用具や小間物の職人に転向を余儀なくされました。また同じように、刀剣の装飾を作っていた錺(かざり)職人も小間物や宝飾品へと作る対象を変えていきました。

 

それが日本のジュエリーの歴史の始まりとなります。

技術継承の危機

ヨーロッパやインド、アメリカなど海外から宝石や装飾品(ジュエリー)の歴史とともに優れたジュエリーの技術と、数々の宝石や宝飾品とファッションの文化が、日本人にも受け入れられて、日本の高度成長期の時代にはジュエリーの文化を確立させました。

 

海外に比べるとジュエリーの歴史は浅いです。しかし、日本人の職人が作り上げたものは、海外のものにも見劣らない程の素晴らしい技術があります。ところが、日本のジュエリーの技も、他の業界と同じように、危機に瀕しています。その原因はジュエリーユーザーの減少、手頃なアクセサリーのブームの到来だったり、海外生産、大量消費時代の終焉などあります。

 

先細りに転換し始めたジュエリー業界では、専門学校でジュエリーデザインを学んでも、その道で生きて行くことは簡単ではなくなりました。卒業生の中には、ごく少数ですがジュエリーの卸会社、下請けメーカーに就職しています。さらに、ごく少数がデザイナーを目指す道に進みます。しかし、現状は卒業生の半分以上は、ジュエリー業界とは関係のない道を選ぶしかないのです。

 

「今のジュエリー業界は、全盛期から後退期、衰退期に向かっている。」

 

これは間違いない事実でしょう。今のジュエリー職人さんたちは、日本古来の技を使った仕事をしっかりと受け継ぎ、粛々と腕を磨き続けているが、海外での安いコストでの生産などの影響もあり、仕事は残念ながら多くはない。

 

過去の習慣や伝統ばかりに固執すれば暮らしていけない。だから孫請けのような仕事も請け負うしかない。職人は、数をこなさなければ腕は上がりません。切磋琢磨しなければ、技も廃れます。

次世代のために道を作る

私たちは、日本の職人の技を途絶えさせないためにも、日本におけるジュエリー文化に新しい旋風を創り出さなければならないと感じています。そのヒント、手掛かりはやはりジュエリーの歴史や意味ではないでしょうか。そして、そのジュエリーに関わる人たちの想いではないでしょうか。

 

ジュエリーのファンがいなければそもそも成り立ちません。私たちとは、ジュエリーのデザイナー、職人そしてそれに共感して活動する人間や応援してくる新しいファンが求められています。

 

世界の歴史から見れば、昔も今も、どの国でも人と人との関わりの中でジュエリーは必要とされてきました。記念日を大切にする心、大切な人と絆、大切な人との愛の誓い、人を慈しみ、労わる心など自分の想いという見えないものを見えるカタチにしたのがジュエリーです。

 

その魅力を作り上げるのは、やはり人なのです。自分にとって大切な人へ想いを込めるからこそ、そのジュエリーは本質から輝き、見る人を魅了するのです。

ジュエリー職人を目指す若者を増やしたい

その活動のひとつが、昨年の10月位に台東区が発行している「手作り工房マップ2015」です。

中学生を対象にした修学旅行先での体験の受け入れは、とても珍しい日本伝統技法の『緋銅』に触れることや、その緋銅プレートに打刻する体験ができることを、前面に出しています。

そのサポートをするのが、わたしであり、現役の職人なので、職業体験談の交流も可能ですし、さらに職人が作業しているところを見学することができます。

ある意味、お店にならぶ眩いジュエリーではなく、その裏側を見るという事はとても大切な事だと思います。

どんな道具を使っているのか、どんな作業があるのか、どうやって指輪ができるのか。

これまで知らなかったことを知ることで、興味を持ってもらうことが、将来のジュエリーの発展に繋がると考えます。

緋銅打刻体験

今年はどんなことにも前向きに挑戦していきます

手作り指輪やブライダルだけに固執せず、いろいろなことに挑戦していきますし、色々な場面に参加していきます。

最終的には、この工房に人が集い、この工房から世の中に発信できることを目指します。

そのために、たくさんの方のご協力やサポートをしてもらいながら、また個々がしっかりと自分の役割を果たしながら、同じ方向性で一緒に邁進していきます。

 

『人の想いをつなぐジュエリー』

ひとりでも多くの方がジュエリーを手にして愛を感じ、幸せになれる心の支えとなる事を願って。