宝石のカッティング

カッティングによって宝石の形が決まり、光沢と色を引き出す技術を言います。

ダイヤモンドとは違って、色石はそれぞれに光学的特質があり、画一的な理想形にカットされるわけではありません。良いカットの色石は、均一な色であったり、許容範囲の数のインクルージョンはありながら、美しく 輝きを放ちます。宝石のカッティングのスタイルは、ファセットカット(幾何学的な形の平らに磨かれた面のある宝石) とノン・ファセット(カボションカットのように、幾何学的な形に磨かれた平面のない宝石)とに分けられます。

ファセットの段階

◆ 切り分ける(スライシング)

スライシングは、宝石の仕上げ工程段階でとても重要な役割を果たしています。原石を選ぶと、先端にダイヤモンドをとりつけた円形のはがねのノコギリを使います。職人は最高の品質を産むにはどのように切るか、どこを切るか、いくつに切り分けるかを判断します。正しくカットされないと、美しさはそこなわれ、どんなに素晴らしい原石だったとしても格下げされてしまいます。

◆ 形を決める(プレフォーミング)

プレフォーミングは、職人の長年の経験と集中力を要するくらい大きな責任を背負っています。美しさだけでなく、職人は常に出来上がった宝石の重量を考えています。

◆ 形づくる(シェイピング)

職人は、「ドブ・スティック」と呼ばれる金属の棒に固定します。それから、宝石をシェイピング・ホ イールに丁寧にかけ、さらに正確なファセットとサイズを出していきます。熟練した職人が限りない正確さで仕上げます。

◆ 研磨する(ポリッシング)

ポリッシングは、最終工程です。宝石が理想のサイズと形に達すると、はがねの水平なポリ ッシング・ホイールでファセットを完成させ、ダイヤモンド・ペーストを使って仕上げの研磨をかけ、隠れた光沢、輝き、きらめきを引き出します。

宝石のカッティングは、主に原石の形状によって決まります。色石に多いオーバル・カットは、美しさとカラット重量の保持について一番バランスがとれています。他のシェイプに宝石を選ぶのは、デザインの美しさ、インクルージョン、カラット重量の損失、色があります。



カットの種類と特徴

▲ アンティーク・クッション・カット

はじめはスリランカでカットされるルビーやサファイアに主に使われたカットです。

アンティーク・クッション・カットのファセット数はおよそ64で「オールド・マイナー」または「オールド・ユーロピアン」カットとしても知られています。十九世紀末期から二十世紀初頭にかけて一般的だった大きなファセットの深いカットと、現代的なオーバル・カットとの折衷のように見えるからです。ソファーのクッションのように見えることから「クッション」が「アンティーク」という言葉と組み合わせて使われます。通常は、四辺が等しい長さである場合だけに使われる名称です。

このカットは、「ピロー・カット」、または、宝石がろうそくの光にきらめいていた頃にデザインされたカットであることに関連して「キャンドルライト・カット」とも呼ばれることがあります。他のカットとは一線を画す驚くほどロマンチックでクラシックな外見で、プリンセス・カットと同様に、アンティーク・クッション・カットは宝石の光沢を最大に生かします。

▲ プリンセス・カット

プリンセス・カットのファセット数は76。ラウンド・ブリリアント・カットの正方形バージョンです。

プリンセス・カットは、深さが70から78%の割合になることは珍しくなく、鋭い、切り落とされていない角のある「ブリリアント・スタイル(垂直方向のクラウンとパビリオンのファセットがあるものを言います)」です。

比較的新しいカットで指の長い手を引き立たせ、三角の石を脇に飾られることがよくあります。デザインのために、このカットは輝きを最大限に生かすためには深さをより多く必要とします。ファセット数が多いため、プリンセス・カットはさらに明るく輝いて見えます。

プリンセス・カットの前身は、バリオン・カットです。約30年前にヨハネスブルクのバジル・ウォーターマイヤーによって発明されました。ハロルド・ニューマンの『図解宝石辞典(llustrated Dictionary of Jewellery)』 によると、プリンセ ス・カットという用語は、1961年ロンドンのアルパド・ナギーによって開発された「プロフィール・カット」として知られているものに以前は付けられていました。

▲ ハート・シェイプ・カット

ハート・シェイプ・カットのファセット数は59です。通常、ハート・シェイプの縦横比は1:1をわずかに越えて、およそ1.1:1の縦長になりますが、1.2:1より長くならないほうが良いのです。

究極の愛のシンボル、ハート・シェイプ・カットのほとんどは丸に近い形です。これは美しい輝きが得られる円に近いパビリオンになっているのが利点です。ほとんどのハート・シェイプ・カットは一粒物として購入されることがほとんどです。

ハート・シェイプ・カットの極めて優れたものは高価です。原石をふんだんに使うことによってすばらしいプロポーションが生まれるからで す。ハート・シェイプ・カットを購入する場合は、全体の作りに注目してください。最初に「この宝石は目を楽しませてくれるかどうか」を考えてみましょう。左右の曲線は丸く、割れ目が比較的鋭くはっきりしているものがいいでしょう。

▲ ブリオレット・カット

ブリオレット・カットは、テーブル、クラウン、パビリオンの区別はありません。熟練したカット職人でも一日に5個~10個しか仕上げることができません。ブリオレット・カットのファセット数はおよそ84ですが、ファセットが多ければ多いほど輝きも増します。

十二世紀のインドにこのカッティングの様式を示すダイヤモンドのカットがあったという噂もあります。ブリオレットは、ダイヤモンドのカットとしては比較的珍しく、色石に使われる方がはるかに多いカットです。

ブリオレットの宝石はアンティークのティアラや、ヴィクトリア朝、エドワード朝、アール・デコの時代からのエステートジュエリー(代々伝わ る宝飾品)などに見られます。今日では、ブリオレットはファッションジュエリーとして人気が高まっています。 ブリオレット・カットは主にイヤリング、ネックレス、ペンダントにセットされています。 イヤリングには、金属線で吊り下げたり、シンプルな貴金属のキャップで覆ったりして使われることが多く、小さなダイヤモンドでアクセントを付けることもあります。 ブリオレットは多くの有名ファッション誌にも取り上げられています。

▲ ファンシー・カット

カッティング技術の進歩に合わせて花、クローバーの葉、星、三角、凧、その他画期的な新しいシェイプをファンシー・カットと呼びます。

新しいデザインのなかには、より大きく、より完璧な宝石に見える錯覚を作りだすことを狙った、スタンダードなシェイプのバリエーションもあります。また、自然のままの原石を生かした遊び心のあるデザインや、革新的なシェイプに形作られたものもあります。

覚えておきたい大切なことは、ますます幅広くなっていくシェイプとデザインの選択肢は、個人の多様なスタイルや好みに適応するために作られている、ということです。どのカットもそれぞれに美しいものです。自然の魔法と職人の芸術的手腕が結びついて、それぞれの宝石を唯一の芸術作品にしているのです。

▲ カボション・カット

カボションは平らなボトム(または、わずかに丸みを帯びたボトム)で凸状、または丸いドーム型のトップの研磨された宝石です。楕円形、三角や四角のシェイプにも仕上げられます。

カボションは、最も古く、最も普及した形の宝石カッティングです。古代には、最高に美しい昔のジュエリーにはカボションで作られたものもあり、驚嘆するほどの王家の東インド産ジュエリーや、アーロンの胸当てなども含まれます。

カボションは、インタリオ(沈み彫り)やカメオとして彫刻をほどこし、ジュエリーを作るのに使われることもよくあります。また、水晶療法にも使われます。また、透明度の少ない宝石(トルコ石、翡翠、瑪瑙など)や、インクルージョンが目立つ宝石の場合にカボション・カットの曲面が特有の性質を引き立たせる場合(シャトヤンシー・キャッツアイ効果、アステリズム・スター効果)に使われます。

▲ バフ・トップ・カット

バフ・トップ・カットは、透明な宝石のためのカボションの変形で、ファセット・カットとノンファセット・カットを合わせたものです。

カボション特有のドーム状のトップに、ファセットの施されたパビリオンを併せもつ石となり、宝石の中心に目が引きこまれるような奥行きがあるような錯覚を与えます。このカットはクラウン部分がすりへりにくい特徴があります。

▲ ミレニアム・カット

ミレニアム・カットは、1999年ごろ、ロジェリオ・グラサによって作り出されたファセット数はなんと1000。

ミレニアム・カットの宝石ひとつにかかる手間は、他のカットの仕事量の約18倍に相当します。パビリオンに624、テーブルに376のファセットがあり、それぞれのファセットには、カッティングからポリッシングまでの間に一回から四回の手をかけることになるのです。

作業にかかる時間に加えてデザインの特殊性(原石の選択、各々のファセット間に一定の鮮明さを保つこと、それぞれのファセットに充分なスペースを作ることなど)、精密なカッティング機が必要であることを考えあわせると、ミレニアム・カットは職人泣かせなカットです。

▲ コンケイブ・カット

コンケイブ・カットは、長さと幅と深さも作る三次元の円錐形のファセットのカットです。ファセットどうしが角で接しているのではなく、溝が間に入ります。この第三次元の深さによって光がさらに屈折し、それによって輝きを最大限に引き出すのです。コンケイブ・カットは光をより均等に振り分け、宝石に均質な内部の輝きを与えます。

コンケイブ・カットは、ダイヤモンドや明るいトーンの宝石では輝きをアップさせることができますが、ルビーのように暗い色の石ではよりくすんで、魅力を失って見えてしまいます。さらに、コンケイブ・カットは重量の損失度合いが大きく、作業が追加で必要なため、伝統的なカットの宝石より高価になります。

▲ ミラー・カット

ミラー・カットの特徴は宝石の幅の90%にも及ぶ、極端に大きいテーブルと厚いガードルにあります。これによって宝石は高い屈折力をもち、文字どおり、名前の由来である鏡の特性を得ることになります。ラウンド・カットの変形で、「ミラー・オブ・ポルトガル」や「ミラー・オブ・フランス」といった歴史的に有名なダイヤモンドの名前にも登場しています。

▲ バゲット・カット

バゲット・カットは、特殊な長方形で、およそ20のファセットがあります。ほとんどの長方形の面は「ステップ・カット」で、パビリオンのファセットが階段状に、縁に平行に、頂点が切り落とされたピラミッドのようにカットされています。ベースとテーブルは三角のファセットと接しています。

バゲット・カットは、原石の結晶が同じような長方形のトルマリンなどに最も適しています。

▲ スクエア・カット

スクエア・カットの標準的なファセット数は57で、側面が同じ長さの特殊な四角形です。ほとんどの長方形の面は「ステップ・カット」で、パビリオンのファセットが階段状に、縁に平行に、頂点が切り落とされたピラミッドのようにカットされています。

このカットは平等、公正な心、正義、秩序、満足、真実のシンボルとも信じられています。

▲ トリリアント・カット

トリリアント・カットの標準的なファセット数は43です。クラウンに25のファセット、パビリオンに19のファセット、ガードルは研磨されています。トリリアント・カットのジェムストーンは三角形のシェイプを基にしています。通常角を切り取った形で、ファセットのデザインも多様なので、このカットは輝くファイアのはなやかなくさびを作りだします。

ジェムストーンを上面からみてみると、キューレットが通常テーブルの真中に見え、パビリオンに均整がとれていることが分かります。側面から調べると、ガードルとテーブル・ファセットは普通平行になっています。パビリオンのメイン・ファセットは通常キューレットから垂直にガードルと交わるまで伸びています。等辺形のために、トリリアント・カットは多くの光と色を返します。

▲ ペア・カット

ペア・カットの標準的なファセット数は71です。オーバル・カットとマーキーズ・カットの長所を合わせたカットで、きらめく涙のような形をしています。

それぞれのジェムストーンの光学的特性にもよりますが、大きく鮮明に見せるには通常縦横比1.5:1のような十分な深さが必要です。リングなら指を引き立たせるでしょう。ペンダントやイヤリングにすると特に美しいカットです。

▲ オクタゴン・カット

オクタゴン・カットの標準的なファセット数は53です。これも「ステップ」カットの一種ですが、四隅が斜めにカットされたものです。ファセットはジェムストーンの周囲に平行に、階段状に配置されています。エメラルド・カットとの違いは、パビリオンの段が等間隔ではない、という点にあります。

▲ ステップ・カット

ブリリアント・カットに次いで、良く使われる主要なファセット・スタイルといえば「ステップ・カット」、別名「トラップ・カット」「エメラルド・カット」があります。長方形、正方形、又は多角形の外形の石に使われ、欠けや割れを防ぐために角をわずかに切り落とした形にします。ステップ・カットの長く、傷のないファセットはジェムストーンの色を最大限に引き立たせます。しかし、インクルージョンがより目につきやすくなるので、このカッティングスタイルは比較的インクルージョンの少ない、または極彩色の素材に最適です。

ステップ・カットはカッティングの際にかかる圧力を減らし、欠け(チッピング)から石を守るように、エメラルドのために特別に開発されました。今日では、現代的なカッティング技術によってこの目的の重要性は減り、幅広い種類のジェムストーンに使われています。


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