みんなで創る手作り指輪

1000年後の物語

ジュエリー職人は、1日8時間の作業を3~6ヶ月間で仕事として慣れる。3年位で形よく作れる。5年間位で大抵のものが作れる。お客様の注文品にすべて対応ができる経験には、10年位が目安となります。

ただ、自分の目標と環境で話は変わります。

  • 興味があるから経験として一度だけでも加工してみたい
  • 形やバランスが悪くても 自分で作ったものを身に付けたい
  • 自分が何かを作ることができるのを見てもらい、知ってもらいたい
  • モノを作ることが好きだから趣味で続けたい
  • 修理などの技術を身に付けて職業としたい
  • 作家活動でジュエリーの歴史を変えてしまうような新しいことに挑戦したい
  • きれいなものを生み出すことで いろいろな人々に喜んで貰いたい

自分はどんなものが作りたいのか、どの範囲のことをどの程度までしたいのかによって、歩む道は異なります。

ここで大切な事は、自分の作ったものには責任を持つことです。ジュエリーは一時を楽しめればいいというものではありません。5年後でも10年後でも元どおりにきれいに直すという気持ちと、それができるだけの技術が必要です。

素材に良いものを使用することは当然のことです。デザインは人気や流行に左右されない自分のデザインが最高だと信じることです。貴金属や宝石でつくったジュエリーは50年後でも100年後でも形として残ります。もし、地球が在って、人類が健康で、ジュエリーが残っていれば、1000年後の人にも語り継がれる感動してもらえるジュエリーを作ることができたら素敵ですよね。


自分でジュエリーを作るということ

基本的には、ジュエリーを作れるようになるには、道具・工具を知り、使い方をマスターしなければなりません。さらに、鍛造なら金属材料の性質を知り、加工できるようにならなければなりません。鋳造なら色々なワックスの特徴を知り、自由に扱えなければなりません。宝石の特徴を知り、欠けさせたり 割ったりせずに、大切に扱えなければなりません。

 

【ジュエリーを作る技術】

 

1)金属を加工する技術を身に付ける

  • ヤスリがけ、糸鋸、ロウ付けをマスターする。
  • 地金吹き、酸処理をマスターする。
  • 丸線、パイプ、板地金を作れるようにする。

2)ワックスで形作る技術を身に付ける

  • ハードワックスを、彫ったり削ったりして、ほぼ完成作に近い形が作れること。
  • ソフトワックスを、捻ったり溶かし付けたりして、ほぼ完成作に近い形が作れること。

3)宝石の名前、硬さ、脆さ、品質、値段、産地、などの知識を身に付ける

  • 柔らかい石は研磨できること。
  • 酸や超音波洗浄に弱い宝石を知ること。

4)石留めの技術を身に付ける

  • 中石を留める・・・ヤットコで。ヤニ付けしてタガネで。
  • 脇石を留める・・・レール留、彫留ができること。

5)鋳造の知識、技術を身に付ける

  • 鋳込む時の、鋳型の温度と、湯の温度を知っていること。
  • スを出さない方法を知り、確実に実行できること。

6)仕上げる技術を身に付ける

  • ロウ目を出さずに 光沢仕上げができること。
  • きれいな平面仕上げができること。

7)デザインができること

  • 宝石の寸法に合わせた、実物大の画を描けること。
  • 新しいデザインが、創作できること。

8)その他

  • 純銀粘土を扱えること。
  • 彫金(鏨による文様彫り)ができること。
  • 打ち出しができること。
  • 電解研磨ができること。
  • めっきの知識と技術があること。
  • バレル研磨ができること。
  • ブラスト装置を使えること。
  • その他、パソコン付属の新しい機械を扱えること。

自分でジュエリーを作るためには、これらの技術を全部マスターすることが望ましいですが、たぶん何十年と長い年月が必要です。

ですから、どれかひとつを確実にマスターすることです。

  • 1)、6)は、加工職人
  • 2)は、ワックス職人
  • 3)は、宝石鑑定士
  • 4)は、石留め職人
  • 5)は、鋳造職人
  • 7)は、デザイナー

【短時間には作れませんし、簡単にも作れません】

手作り指輪の場合には、作りたい本人が2)ワックス職人と7)デザイナーになるのです。婚約指輪も結婚指輪も納期があります。そこから逆段取りをしていきます。リンプラでは、打ち合わせと制作を別々の日に行うことをご提案しています。その理由は、指輪作りが初めての方が多いからです。この期間だけでも指輪のことを、24時間のどこかで、毎日考えることで、日常の仕事中はもちろん仕事をして、昼でも 夜でも、食事中でも、お風呂の中でも、本を読んでいる時でも、眠っている時でも、“ 頭の中でずっとその指輪を創る作業を続ける ”ことができます。つまり、意識するか・しないかは、同じ行為でも結果が違うのです。

“短期集中”は効果が倍増しますが、“継続” も違う種類の効果が倍増します。7)のデザインは、毎日頭の中、メモ紙に描いては消し、描いては消し、消さなくてもいいですが、どんどん描くということで洗練されていきます。

それを楽しむことができれば、制作の時にはさらに楽しさが増えます。不安もあるでしょうが、実物大で描けるものは作ることができます。それに、形にするためにサポート致します。


制作の手順は個別対応しています

手作り指輪は、時間と技術と集中力が必要です。世界にたったひとつの大切な指輪に相応しいレベルの高い完成品になるように、デザインから仕上げまでのプランを打ち合わせで一緒に練りながら、その後に制作を開始します。失敗に対して気が散らないように、フォローができることを伝えながら、一つ一つの工程を進めながら完成を目指します。

制作手順は、その方に合せたり、デザインに合わせて最短時間で完成してもらえるように努めます。しかし、途中で予定外の不都合なことが起きた場合、いくらかの修正を試みますが、それでも満足できない場合、もう一度最初から制作をして頂きます。そのことも記憶と手の感触に経験として指輪に宿ります。


店ではなく人で選ぶ

自分が満足できれば、すべて良し とする考え方があります。また、手作りの場合には、贈った相手が喜ぶ姿を見て満足ができます。さらに自分の周りの人たちがいいね!と言ってくれれば、さらにその価値を確信できます。

しかし、人の好みは十人十色。指輪を自分で創るという行為も指輪は自分が選びたいと思う気持ちもあります。

ここで言いたいことは、創作活動や価値あるものは純粋なもの程、感動と喜びが増えるということです。

手作り指輪で必要なことは、相手への想いです。最高の出来のものを創作することが自信になります。それは自分にもメリットがあります。それを身につける人にもメリットがあります。

折角、自分の創った指輪に満足感や自信、責任が持てないのであれば、それはとても悲しいことです。

制作では、自分が「完成した」と思った時が完成となります。例えば、“ざっくりした感じでこんなシーンに合うセンスのいいもの ”と意識してつくり始めれば、幅や厚さや重さやテクスチャー、形や曲がり方にも意味が出てきます。微妙に曲がっていても、厚みがあっても、凹凸があっても、あえて活かすこともできますし、職人へ依頼して滑らかに整えることもできます。

ただ、専門家として、指輪が重すぎる、ストッキングなどに引っかかる、ダイヤモンドが簡単には外れないようにするなどなど、実際に身につけることを考え、TPOでの使い勝手はお伝えします。

純粋性は作る本人だけではなく、サポートする側にも必要な要素です。つまり、誰もが純粋に作り手の想いに共感して行動することが最高の指輪を創りだす理想の形なのです。デザインをすることも、素材を準備することも、加工をすることも、仕上げることも、すべて綿密な計算と正確な技術が必要となります。その知識と経験と技術は、すべて手作り指輪を選択された方に提供するのがプロです。ですから、1日に制作できるのは1組となるのです。


「世界にひとつ」いろいろな意味やレベルがある

世界にひとつの手作り指輪には、色々な意味やレベルがあります。子供が作る指輪も、中学生がつくった指輪も、見習い職人がつくった指輪も、建築デザイナーがつくった指輪も、金工の伝統技術を持つ熟練作家がつくった指輪も、ジュエリー作家がつくった指輪も世界にひとつです。

この違いは、技術、工具機械、センス、コンセプト、思い入れ、材料、装着感、ブランド、制作コスト、値段、雰囲気、完成度、満足感など。

商売では、他社の指輪とはこことここが違いますと積極的にデザインや値段やアフターサービスなどを主張して、売れるジュエリーを追い求めながら販売促進を行います。

また、こんなこともできるんですと 技術の巧拙は二の次に、デザインとアイデアの指輪を個人で提供している人もいます。

作家であれば、これまでの受賞歴やどこぞのグループに所属しているとか、自分の服装・ヘアスタイル・性格などのキャラクターや、変わったデザイン・一般的ではない素材などで差別化し、個性・感性を前面に押し出して名前と作品を売る人もいます。

それでは、自分が手作りした世界にひとつにはどんな意味があるのか?

まず一番初めに満足するのは本人です。完成した指輪を見て、手に取って満足感がどこまで込み上げてくるかが、価格以上の付加価値です。相手の性格や好み、価値観を理解しているからこそ、手作りができるとも言えます。時間をかけるほどに、素人目にはわからない程の デザインが洗練されていきます。そして、そのデザインには必然性を感じられるものになります。身につけたときの彼女の喜びの姿やそれを喜ぶ自分の幸福感は想像できるはずです。既製品を贈る以上に喜んでもらえるのです。

そこには、指輪を作るセンスや技術はあまり関係はありません。それは、相手とのこれまでの関係に問題があるのかもしれません。指輪の責任にする前に、もう一度お互いが向き合うきっかけにしてはいかがでしょうか。

最後に、その人にとって「憧れ」と「想い」のどちらが判断基準になっているのかを知ることです。

指輪の憧れがある人は、手作りには不向きなことがあります。想いを大切にしている人には、手作り以上の指輪はないと思います。


手作り指輪はジュエリー業界の救世主

 手作り指輪を選ぶ場合には、自分で決められる人と、自分の判断では不安だから他人の評価に後押ししてもらわなければならない人と、他人の評価にも疑問を感じる人と、個人個人が様々です。これだから、口コミよりも情報を信じる傾向にある。

自由な発想で想いを込めるとは、これまでの制約の枠を壊そうと思っています。今の手作り指輪と既製品との境目、手作り指輪とオーダーとの境目はなんだろうか?ブライダルジュエリーは毎年様々なブランドが新作発表を行っている。しかし、それもマンネリ化となり、オーダー品が注目を集める。婚約指輪も結婚指輪も顕在化した人が選ぶものだから、その注目が手作り指輪になっているだけのようにも感じるのは、自分だけだろうか。つまり、本質を変えるほどのものであるだろうか疑問を抱く。

過去の流れの枠から外れないで 同じ道をもう一度なぞって歩んでいる場合には、手作り指輪は一過性で終わるのではないだろうか。つまり、手作り指輪を贈る文化を後世に伝えていくことは、人類の歴史にとって価値のある大切なことだと思います。それは指輪ではなく、その時代に生きた人の想いを後世に伝えていくことを意味するからです。

独立をした理由は、手作り指輪の世界を創造することを目指す決意をしたからです。現在は、自分で方向性を決めることができる状態ですが、自分が目標に到達するための方法も技術も道具も、今何が必要なのかは誰に聞いても頼んでもすぐには教えてはくれません。知っている人が世の中のどこにも一人もいないのですから当たり前のことです。

正直、毎回毎回が本番であり、試行錯誤で成功と失敗の連続です。今でも納得できる答えが見つかるまでは四六時中手作り指輪のことを考えています。そして、今は店舗を持たずして工房があります。想いを共感してくれて、支えてくれる。信頼できる技術のある職人がいます。自分の活動を理想と言ってくれるこれから職人を目指す人がいます。リンプラで手作りされた方はとても満足してくださっています。そして、指輪を大切にしてくれています。

「感動と喜びを増やす」この理念を手作り指輪で実現します!